長野県にある2つの酒蔵が、それぞれ独自に醸した純米酒をブレンドしたコラボ商品「蔵縁(くらえにし)」を発売しました。

黒澤酒造×大雪渓酒造「蔵縁(くらえにし)」

黒澤酒造と大雪渓酒造のコラボ商品「蔵縁(くらえにし)」

今回の企画は、長野県佐久穂町の黒澤酒造と池田町の大雪渓酒造が初めて取り組んだものです。

黒澤酒造が造る、どっしりとした味わいが特徴的な生酛造りの純米酒と、透明感に優れ、すっきりとした味わいをウリにしている大雪渓酒造の純米酒をブレンドし、まったく新しい味わいの純米酒が誕生しました。このユニークなコラボレーションがどのようにして誕生したのか、その裏側に迫ります。

これまでにない、斬新な企画を

プロジェクトがスタートしたのは、2018年の初め。黒澤酒造の社長・黒澤孝夫さんは、当時を以下のように振り返ります。

「妻の実家が大雪渓酒造だったので、以前から交流があったんです。今年の初めにお会いしたとき、蔵同士で協力して、これまでにない企画を立ててみようという話になりました。同じ酒米・同じスペックで造って飲み比べてもらうのもアリだし、近年流行の共同醸造酒も悪くない。ただ、どちらも先例がたくさんあるので、もっと斬新な企画をできないかと悩んだ末に考えついたのが、それぞれの酒蔵が独自に造った純米酒をブレンドするものでした」

黒澤さんはさっそく、自蔵の杜氏・黒澤洋平さんと、大雪渓酒造の杜氏・長瀬護さんにアイディアを話しました。「丹精込めて造った酒を混ぜ合わせるなんてもってのほかと、反対意見が出るのではないか」と心配したそうですが、2人の反応は「おもしろい。やってみよう!」という前向きなものでした。

大雪渓酒造杜氏の長瀬護さん

大雪渓酒造の杜氏・長瀬護さん

「うちの蔵では、ふだんから、酒のブレンドを積極的に行なっています。だからこそ、ブレンドの奥深さについては充分承知していました。しかし今回は、それを複数の蔵でやるという話。美味しく化けるのか、あるいはその逆か。考えただけでもわくわくしました」と、大雪渓酒造の長瀬さんは話します。

黒澤酒造杜氏の黒澤洋平さん

黒澤酒造の杜氏・黒澤洋平さん

黒澤酒造の洋平さんも「黒澤の酒でも大雪渓の酒でもない、異次元の酒になるのでは」と、当時の期待を語ってくれました。ふたりは2009年から同じタイミングで杜氏に就任し、同世代の造り手として仲が良かったことも、プロジェクトがとんとん拍子に進んだ理由だったようです。

真逆のタイプをブレンド!その結果は......

ブレンドする日本酒は、酒米や精米歩合などのスペックをあえて同じにせず、それぞれの個性を前面に出した酒を持ち寄って、いろいろな組み合わせを試して決めることになりました。

テイスティングの結果、選ばれたのは、黒澤酒造が長野県東御市産のひとごこち(精米歩合65%)で造った生酛の純米酒と、大雪渓酒造が長野県松川村産の山恵錦(精米歩合59%)で造った純米酒でした。

その酒質は「生酛で醸した、黒澤らしいどっしりとした奥行きのある味わい」(洋平さん)と「速醸で醸した透明感のあるすっきりした軽快な味わい」(長瀬さん)だそうで、真逆のタイプだったようです。

黒澤酒造×大雪渓酒造「蔵縁(くらえにし)」

この2種類を、1:1の割合でブレンドしました。その結果、それぞれの個性を足して2で割ったような味わいではなく、まったく異なる独特の酒に生まれ変わったのです。長瀬さんは「黒澤の幅がある味わいに大雪渓の酸味が加わって、"フレッシュな生酛"に変身しました」と、評価しています。

黒澤酒造杜氏の黒澤洋平さん(写真左)と大雪渓酒造杜氏の長瀬護さん(写真右)

2蔵のご縁で誕生したことから「蔵縁(くらえにし)」と名付けられたこの日本酒。長野県内限定で10月23日から発売されました。四合瓶は1,500本、一升瓶は500本の限定商品です。

ふたりの杜氏は来年以降もコラボ酒を造っていきたいと話してくれました。新しい動きを楽しみに待ちましょう。

◎商品情報

  • 黒澤酒造×大雪渓酒造「蔵縁(くらえにし)」
  • 容量:720ml/1800ml
  • 価格:[720ml] 1,300円(税込) [1800ml] 2,700円(税込)

(取材・文/空太郎)

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