25歳の蔵元杜氏が起こした革命

新澤醸造店の創業は明治3年(1873年)。創業時は、「荒城の月」で有名な土井晩翠が銘柄「愛宕の松」について句を詠むなど、人々に愛されました。しかし、平成12年(2000年)ごろには普通酒中心の経営環境となり、廃業の危機に追い込まれました。そんな折、現蔵元の5代目・新澤巌夫氏が25歳の若さで杜氏となりました。当時県内最年少の杜氏でした。

新澤巌夫氏は、ほぼ全量普通酒だった蔵を、一気に9割を純米酒にする大変革を行います。そして、「究極の食中酒」をコンセプトに食事を引き立てるお酒、口の中をきれいに洗い流し、次のひと口をより引き立てる酒を目指し、平成14年(2002年)に「伯楽星」が誕生。銘柄名は、蔵のある三本木に伝わる「馬の目利き、伯楽が育てた名馬が天に昇った」という伝説から取り入れました。当初は特約店限定販売でした。

東日本大震災を乗り越えますます堅調

伯楽星アイキャッチ

「伯楽星」は少しずつ全国の飲食店、日本酒ファンの間で人気が高まり、平成16年(2004年)にはJAL国際線ビジネスクラスの提供酒に選ばれました。順調に推移していた折、再び蔵に危機が訪れます。2008年の宮城・岩手内陸地震で創業当時の蔵が大きく損傷を受けたのです。さらに3年後の2011年3月11日、東日本大震災では壁は崩れかけ柱が傾き、全壊判定を受けたため、その年の酒造りをもって取り壊しとなりました。

現在、本社は三本木に残しながら、酒造り部門は約80㎞離れた川崎町に移転し、銘酒を生み続けています。四季醸造蔵に移行し、全商品をマイナス5度の氷温庫に貯蔵するなど厳正な管理のもと、ベストな飲み頃に消費者へ届ける体制を整えています。

食事と合わせて真価を発揮する「究極の食中酒」

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伯楽星 純米吟醸」は宮城県産の酒米「蔵の華」を55%まで磨いています。上立ち香は非常に爽やかで、バナナのような果実香。口に含むときれいで独特の酸と米のうまみが口の中で溌剌と踊る印象。究極の食中酒を目指すだけあり、強いインパクトは感じませんが、キリッとした中にも柔らか味や膨らみも感じ、確かなパワーを感じます。後口はスパッと切れていきました。

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食中酒ですが、決して淡麗ではないので、和食から焼き鳥などの肉料理、そしてイタリアン系の洋食など、どんなおつまみ、お食事にも適応できるポテンシャルを持っています。魚介系の鍋や、白子やあん肝などの魚卵系などは特に相性が良さそうです。

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