佐賀有数の酒どころ・鹿島の老舗蔵

九州でも有数の酒どころ佐賀県。中でも鹿島市は、6つの酒蔵が銘酒を醸し、日本酒好きには注目の街と言ってもいいでしょう。「鍋島」を醸す富久千代酒造も、同市にあります。鹿島市も「酒蔵ツーリズム」と題してガイド養成講座を開催するなど、「酒蔵のまち」として売り出しています。

そんな鹿島市に構える矢野酒造の歴史も古く、創業は江戸期の寛政8年(1796年)。蔵は明治期のもので、母屋は国指定の登録有形文化財となっています。主要銘柄は「肥前蔵心」「竹の園」。年間生産石高は600石。昭和62年(1987年)から純米酒への取り組みを始め、平成16年(2004年)からは純米酒を中心に醸す「純米酒宣言」を行い、社長自ら蔵に入り、杜氏とともに酒造りに励んでいます。現在の製造責任者は、9代目の矢野元英氏とのこと。

パンダラベルシリーズが大人気

現在は「竹の園」銘柄のかわいいパンダラベル「ぱんだ祭り」シリーズが大人気。「竹の園」には竹が好物とされるパンダがふさわしいと、佐賀の酒を応援する市民グループの発案で2012年から、季節によりさまざまなパンダラベルのお酒が販売されています。

この「辛口純米酒 強敵」はパンダシリーズの秋バージョン。「強敵」と書いて「とも」と読みます。ラベルに派手さはありませんが、パンダのほかシロクマが登場。一緒にお酒を仲良く差し合っている姿が可愛らしく印象的です。現実ではありえないコラボ。動物園では人気を二分するので「強敵」ですが、同じ熊の仲間なので「とも」となるのでしょうか?

米の旨みとシャープな酸が心地よい晩酌酒

同酒は、酒造好適米「吟吹雪」を57%まで磨いています。吟吹雪は「山田錦」を母に、「玉栄(たまさかえ)」を父とした酒米。香りはおだやかで、いちじくのような甘やかさ。口に含むと、吟吹雪の特徴を活かした、山田錦のふくらみと玉栄の力強さを感じられ、米の旨みを存分に味わえます。しかしくどい感じは一切なく、シャープな酸が後味を引き締めてくれ、適度なキレが心地よいです。辛口というより、しっかり発酵させたお酒に感じるサッパリとした後口。

お燗にすると丸く柔らかくなり、ゆったりまったり飲める極上の晩酌酒となります。食中酒としては万能で、和食全般、特に魚介系(キス、鱧、ワカサギなど)の天ぷらや、焼き魚や煮魚、豚の角煮などに合うでしょう。限定酒なので、なかなか手に入りませんが、冬はこたつに入って温まりながら、燗酒とラベルに癒される呑み方もありですよ。

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