桶売りからコスパ抜群の純米酒を醸す人気蔵に変身

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創業は昭和3年(1928年)。初代は江戸時代からの酒蔵である谷口酒造出身で、古来から「無量山超願寺」という寺を営んでいた山本家の家督を引き継ぎます。酒好きが高じて酒造業を営むことになりました。戦前は酒造禁止令で酒造業も廃業に追い込まれるなどし、戦後も免許復活には時間がかかり昭和27年(1952年)にようやく酒造りを再開。「平和な時代に酒を造れる」喜びを表し、平和酒造として株式会社を設立ました。しかし、昭和60年代までは、経営難もあり、大手の蔵に酒を売る「桶売り」を中心に醸し、自社ブランドはパック酒を地元で売るだけでした。蔵元4代目となる山本典正氏が平成16年(2004年)に蔵に戻り、2006年度にコスパ抜群の高品質ブランド「紀土」を誕生させたところ、たちまち人気蔵となりました。

積極的に新卒採用、日本酒文化を若い世代へ紡ぐ

特筆すべきは毎年、大卒の新入社員を入社試験を行い採用していることです。日本酒を日本古来の伝統文化として未来へ引き継ぐ後継者づくりにも余念がありません。かつては、季節雇用の杜氏集団が職人として酒造りを行う時代から、大きく変革している時期なのかもしれません。
また、名産である紀州梅を使った梅酒造りにも力を入れ、自社の梅畑も所有しています。もちろん、酒米の自社田も所有し、「飲むと紀州を感じられる酒造り」をモットーに、万人に美味しいと思ってもらえるお酒を目指しています。

デザート酒として楽しみたい華やかな美酒

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同銘柄は柴田杜氏渾身の限定酒。山田錦を50%まで精米した純米大吟醸の中汲みの部分でも、特に出来のよい部分を瓶詰めしています。年末年始のわずかな時期にしか出荷しないレアな生酒です。26BY(平成26年醸造年度)から純米大吟醸となっています。

グラスに注いだとたんに、いちごミルクや、バニラを思わす、上品で華やかな香りが鼻腔をくすぐります。口にふくむとフレッシュ感とともに、シルキーでビロードのような滑りの良さと、山田錦特有の米の甘味、膨らみが口いっぱいに広がります。ふくらみだけではなく、爽やかな酸味とのバランスが絶妙。後味も十分な余韻を残しながらもスッと消えていきます。生酒ということもあり紀土にしては華やかでゴージャスなお酒です。食中酒というよりも、ワイングラスやショットグラスに注いで食前食後のデザート酒として楽しめるお酒です。

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